最近は猫も杓子もジョブ型、ジョブ型。
でも、「結局ジョブ型って具体的かつ正確にはどんな人事制度を指しているのか」って言うと、ジョブ型の対義語として用いられるのが「メンバーシップ型」だったり「年功序列」だったりするから分かりづらいですよね。
雇用の在り方そのものを指してジョブ型と言ってみたり、等級・処遇制度を指してジョブ型と言ってみたり。
で、雇用の在り方を指して「メンバーシップ型からジョブ型への移行が必要」とかって話は、すなわち社会のありようを変えるってことに他なりませんから、まぁ、それは学者や官僚の皆さんにお任せして、私たち民間企業のサラリーマンが「ジョブ型」という時には等級や処遇の制度のことを指しているケースがほとんどですかね。
なので、これ以降は等級や処遇の制度における一形態を指して「ジョブ型」ということで話を進めたいと思います。
ジョブ型に振り回されてます
ジョブ型の流行りに乗った会社の大半がそうではないかと思うのですが、私の今いる(出向してきている)会社では「管理職員はジョブ型人事制度、一般職員は職能等級制度」というハイブリッド式でジョブ型人事制度が導入されました。
コンサルに言わせると、これから日本企業が目指すべきは「若いうちは職能等級、係長級か課長級以上はジョブ型のハイブリッド型人事制度」らしいです。
しかしながら、私は今いる会社で人事部に所属し人事異動や昇進などの運用を担当しているのですが、このハイブリッド型のジョブ型人事制度って奴にはほとほと振り回されて困っています。
そもそもジョブ型の人事制度ってなんだっけ
私の会社も含めて日本企業で導入された「ジョブ型人事制度」って、結局、言葉を取り換えただけで、その中身は昔からあった「職務等級制度」なんじゃないかと思っています。
「職能等級制度」と「職務等級制度」の違いを説明する際には、語学学校の講師を例に説明されることが多いですよね。
ある語学学校で英語の授業を担当する2人の講師がいます。A講師は英語とフランス語を教えることができます。B講師は英語だけしか教えられません。A講師とB講師の報酬をどのように決めますか?という問いに対して、
職能等級制度の語学学校では、「能力」に着目しますから、2か国語を教えることができるA講師は、1か国語しか教えられないB講師よりも能力が高いので、同じ英語の授業を担当していても、A講師の方がB講師よりも報酬は高くなります。
これに対して職務等級制度の語学学校では、「職務」に着目しますから、「英語の授業を担当する」という点においてA講師とB講師に違いはないので報酬は同じです。
っていうやつ。
いや、なんかこれってそのままジョブ型人事制度の説明にも聞こえるんですけど!
「ジョブ型」には、欧米流の働き方である「ジョブが無くなったら会社を去る」とか「会社が勝手にジョブを変える(異動させる)ことはできない」ってニュアンスが含まれているはずなのですが、残念ながら私の会社のジョブ型人事制度においては、撤退した事業に従事していた管理職の面々は別の事業に配置転換されていますし、会社が(本人の了解も得ずに)現場の所長だった人を本社の課長にしたりして、もろに「メンバーシップ型」の運用をしています。
「これが今流行りのジョブ型人事制度ですよ。これを導入しないと時代遅れですよ」とコンサルに唆されて、昔ながらの職務等級制度をわざわざコンサルに高い金を払って導入してしまったのでは・・・しかもハイブリッド型とかいう混乱のもとにしかならない訳の分からない形にして・・・と思えてしまうのであります。
ハイブリッド型の何が問題か
これから新たに会社を立ち上げて、最初から「一般職員は職能等級制度、管理職員はジョブ型」というハイブリッド型を導入するのであれば問題はないと思います。一般職員が管理職員に昇進できるのはポストに空きが出た時だけと厳格に運用していけばいいのですから。
これが職能等級制度からハイブリッド型に移行となると話はまったく違います。
既に多くの部下無し管理職(課課長とかスタッフ課長とかメンバー課長とか呼び方は様々)が存在してしまっている中で、「今日から一般職員の皆さんはポストに空きが出た時しか管理職員に昇進できませんよ」と言ったって、「ふざけるな」って言われるだけです。
「山ほど課課長がいるのに、なんで俺たちだけポストに就かないと管理職員になれないんだ、おかしいだろ」って。
かといって、課課長を一般職員に降格させることもできず、、、最初から袋小路に突入することが目に見えています。
そして完全に迷走しはじめました
私の会社では、この袋小路を脱するために、「課課長」を「みなしポスト」とか言い出して、みなしであっても「ポスト」なのだからとJDを作成したりしました。
で、ライン長のポストに就かなくても、昇進後に担当する業務内容を「JD」として人事に提出することで、みなしポストに就くという建前で次から次へと一般職員を課課長へ昇進させたのです。
結局、昔ながらの職能等級制度的に昇進させておきながら、ジョブ型っぽい「JD」を持ち出すことで、「俺たちはちゃんとジョブ型をやれている」と自己暗示をかけていたのです
ま、それだけならジョブ型人事制度として導入してみたけれど職能等級制度時代と何も変わらなかったで終わるだけなのですが、さらに悪いことがありまして。。。。
華々しく「管理職員にジョブ型人事制度を導入する」とぶち上げた時に、ジョブ型人事制度と昇進試験はそぐわないとして昇進試験を廃止してしまっていたのです。
運用は何も変わっていないのにただただ試験だけが廃止されたという状況になってしまいました。
その結果どうなったかというと、従業員だけならまだしも役員とかまで「なんか、うちの会社って管理職員に昇進するときの基準が曖昧で公平性が担保されてないよね」とか言い出したのです。
で、「試験以外の方法で管理職員に昇進するときの公平性を担保する仕組みを検討しろ」と上司から命令されたのがこの私というわけです。
・・・いや、無理なんですけど。。。。
例えば「成績要件を満たした管理職候補が10人います。この中から今年管理職員になれるのは5人です。別にこの5人は特定のポストに就くわけではありません。この10人はバラバラの部署にいるので単純に相対評価することも難しいです」という状況で、試験以外の方法で客観的に公平に5人を選抜する方法を教えてほしいです。